LGBT（性的少数者）への理解を深め、多様性のある社会を実現―。北陸でいち早くダイバーシティ宣言を掲げた富山大学は、性の多様性に関する啓発はが進んでいる。2015年秋には人文学部の林夏生准教授が中心となって、多様性について学び考える場づくりをスタート。悩みを持つ当事者だけでなく、教育現場や行政職員に向けた講演会などを積極的に行っている。

林准教授は、セクシュアリティ（性のあり方）を理由に家族や友人から拒否され、「自分らしく生きたい」と古里の富山を離れる当事者を目にしてきたという。「富山が大好きなのに、家族や親戚、知り合いから『早く結婚して子育てを』と言われるのがつらく、自分を責め悩んでいる人も多いのが現状」とみる。

富山がすべての人にとって「暮らしやすい街・帰れる故郷」になるよう、富山大学人文学部内の一室に「やわカフェ」を開催した。学生はもちろん、地域住民なども集い、さまざまなセクシュアリティを持つ人、学びたいと考える人が本音で語える場となっている。カミングアウトしていない人の悩みや気持ちを表した写真展も企画。行政や全国各地の団体との密に連携を図っている。林准教授は「特に中高生の当事者たちにとっては、どこにも居場所がないという声が多い。全ての人に人権が適用され、誰もが安心して生きられる、公正な世の中になることを願っている」と語る。